月報司法書士 2001年8月号 [Legal Support News]より

成年後見制度等の動向とリーガルサポートの役割

                        社団法人 成年後見センタ−・リ−ガルサポート
                               業務審査委員 棚村 政行

 新しい成年後見制度がスタートして、すでに1年以上が経過した。この間、全国社会福祉協議会での地域福祉権利擁護事業、介護保険法なども導入され、わが国での急速な少子・高齢化の進行、要介護者の激増と家族の過重負担、高齢者の判断能力の低下と財産管理などの焦眉の課題に、必要とされる法的措置や社会的対応がまさにとられようとしつつある。
  ところで、最近、最高裁判所事務総局家庭局では、平成12年4月から平成13年3月までの、1年間の全国の家庭裁判所での成年後見事件の概況を公表した。これによると、後見、保佐、補助の開始及び任意後見監督人選任事件など成年後見関係の事件数は、9007件に達した。とくに、後見開始の審判は7451件、昨年の禁治産宣告の申立件数との対比でも、約2.5倍の増加となり、保佐開始の審判申立件数は884件で、準禁治産宣告と比べて1.3倍増となった。これに対し、軽度の痴呆や知的障害、精神障害に対応する補助の申立て件数は621件であり、後見の10分の1以下の申立てしかない。おそらくは、判断能力に相当問題のある重度のケースが多かったり、新設されたばかりの補助制度の活用につき周知徹底がはかられていない面もあったのかもしれない。任意後見契約締結の登記件数は801件あり、任意後見監督人選任申立ては51件であった。今後、事前措置としての任意後見制度の利用件数も増加が予想されよう。
 申立人については、本人の子が最も多く全体の約40%を占めており、本人の配偶者が約19%、兄弟姉妹が約17%という順になっている。新たに認められた市長村長からの申立ては23件で、全体の0.5%しかなかった。市長村長の申立て事案では、施設への入所契約、介護保険契約の締結などが主要な動機としてあげられ、成年後見人等として、弁護士や司法書士などが選任されている。平成13年度には厚生労働省の「成年後見制度利用支援事業」を利用する市町村もあり、将来的には、市長村長の申立てはもっと増えてくるのではなかろうか。その際、身近な高齢者のアドボカシー(権利擁護者)としての、成年後見センター・リーガルサポートに期待される役割はますます増大するであろう。
 また、本人が65歳以上のケースは、男性で約43%、女性では全体の約73%を占めていた。申立ての動機は、財産管理処分が多いが、身上監護や遺産分割協議なども少なくなかった。財産管理と身上監護の両者の関係は、実務上も密接な関係があることが再確認できよう。介護保険契約の締結を目的とするものは、約2%と少なかった。本人の生活状況をみると、病院や老人ホームに入所している者が全体の約62%を占め、家族と同居したり、一人暮しでいるケースは約34%と決して多くはない。本人の成年後見人等に選任されたのは、子、配偶者、兄弟姉妹など親族が全体の90%以上であり、第三者が選任されるのは10%弱であった。弁護士がなったのが166件、司法書士等は117件である、法人後見人も13件となっている。欧米諸国と比べても、親族の割合が多すぎる。法人後見人としては、成年後見センター・リーガルサポート、社団法人家庭間題情報センター、社会福祉協議会などである。複数後見人についても、108件あり、子ども2人が事務分担をしているケースと、弁護士、司法書士等が財産管理を、親族が身上監護を分担しているケースもみられる。この点でも、受け皿としての機動性、専門性、庶民性、関係機関との有機的連携を発揮できる団体はまだ少なく、リーガルサポートに期待するところ大である。
  高齢者・障害者の生活支援を目的とした社会保障や福祉サービスは、措置から本人の選択・契約へと大きく転換し、サービスの担い手も、行政や社会福祉法人に限らず、ボランティア団体、民間の営利事業者など多様な提供者が登場してきた。また、一人暮しのお年寄りや判断や事務処理に不安のある高齢者・障害者に、福祉サービスの支払いや預貯金の出し入れ、通帳や証書等の保管などの生活支援をするため、1999年10月から「地域福祉権利擁護事業」もスタートしている。1999年10月から2001年3月末までで、全国での社会福祉協議会への相談・問い合わせ件数は、5万5370件だったという。地域福祉権利擁護事業は、確かに市区町村という地域の社会福祉協議会で、小回りがきく利便性があるため、権利擁護サービスの入り口的機能を果たしている。しかし、支援対象者や支援範囲が限定されており、利用料金も比較的割高で、利用率の伸びはそれほど大きくなかった。契約締結件数は、出足がにぶかったが、2001年3月末で、準備件数も入れると、ようやく2443件に達した。

 このような状況下で、2001年5月に、和歌山市で介護支援専門員が、利用者である75歳の女性を殺害し、預金通帳を奪うという不幸な事件が発生した。このような不祥事や悲劇を防ぐためには、二重三重のチェック体制と職業倫理の徹底が必要だろう。幸い、この分野に強い司法書士で作るリーガルサポートは、全国に50の支部を設け、会員数3216名、名簿登載者1857名にも及ぶ中核的専門職団体を担いつつある。総務委員会、執務管理委員会、研修委員会、業務研究委貞会など各種委員会を充実させ、対内的にも対外的にも、質の高いサービスの提供、本人の自己決定や意思を尊重した支援をめざし、組織固めと体制の強化を狙っている。とくに、各支部や業務審査委貞会では、名簿登載者の確認とチェックを厳しく行い、執務管理委員会では各支部からの報告書のチェックと会員の指導を徹底し、、会員執務規則を設けるなど職務の公正さとこれに対する社会や利用者の信頼の確保に力を注いでいる。それにもかかわらず、リーガルサポートも、まだまだ受託件数自体は決して多いとはいえない。組織、システム、運用や広報の在り方などのどこに原因があるのかを具体的客観的に分析点検する必要もあろう。しかし、いずれにしても、今日、リーガルサポートには、高齢者・障害者の快適な暮らしや安心を支えるアドポカシーとしての役割が求められており、高齢者等の人権と生活を守る非営利団体(公益法人)としてそのさらなる発展を期待したいと思う。
                                (たなむら・まさゆき/早稲田大学法学部教授)