月報司法書士 2002年1月号 [Legal Support News]より

リーガルサポート3年目の活動を迎えて

   社団法人 成年後見センター・リーガルサポート 理事長 大貫 正男
 リーガルサポートが設立されてからすでに2年が経過した。「成年後見制度」
という誰も経験したことのない未開拓の分野への挑戦であったが、最高裁判所、
法務省、全国の各家庭裁判所をはじめとする関係機関のご支援により、この2年
間で、今後の当該制度のあり方を方向付ける上で大きな意義を持つであろう数々
の実績を残すことができた。例えば、約1800人にのぼる「成年後見人候補者名簿」
を各家庭裁判所に配布したのを皮切りに、国際シンポジウムの開催、全国一斉無
料成年後見相談会の実施、成年後見人養成講座の開催、「公益信託 成年後見助
成基金」の創設、そして『実践 成年後見』の責任編集など多岐にわたる事業を
矢継ぎ早に行った。また、多くの会員、さらにはリーガルサポート自体が成年後
見人等に就任し、具体的な相談や財産管理を行う過程で新しい成年後見実務を徐
々に作り上げることができた。
 リーガルサポートの2年の活動を総括すれば、成年後見制度の普及および利用
を促進させる原動力となると共に、全国各地において高齢者・障害者等の権利擁
護の役割を少なからず果たしてきたといえよう。また、昨年公表された最高裁判
所事務総局家庭局の報告にも、リーガルサポートの関与した事例が紹介されてお
り、実績の面からも成年後見制度の受け皿としての社会的評価がなされたと考え
る。道なき道を試行錯誤を繰り返しながらも、日本司法書士会連合会、各司法書
士会等の物心両面にわたる支援を受けつつ、組織の原型をほぼ完成させると共に、
3年目を迎える活動の方向性が鮮明に見えてきたところである。
 さて、「よく知られていない」と評されてきた成年後見制度も、ここでようや
く浸透の兆しが見えてきた。リーガルサポートの本部にも一般の方々からの利用
上の問い合わせも目立ってきた。このような状況をふまえた上で今年は、制度を
さらに社会に定着させるべく、昨年度の事業を継続して実施したい。特に好評の
成年後見人養成講座では、ドイツのような「職業後見人」という人的資源をイメ
ージしながらスクール形式の有料養成講座を企画したい。成年後見人等に選任さ
れる9割は親族という状況からも、基本的法律知識の理解と本人への権利侵害や
制度濫用を防止する手だてをぜひ尽くさねばならない。この事業は、家庭裁判所
における適格な成年後見人の選任をフォローするという見地からも公益法人にふ
さわしい内容といえる。
 昨年12月に創設された「公益信託 成年後見助成基金」はいよいよ利用者の募
集を開始する。市町村等からも期待が寄せられているが、初年度は毎月約1万円
を10人程度に支給(贈与)するという誠にささやかな基金である。資金が枯渇せ
ぬよう、引き続き寄付を求めざるを得ないため、ぜひとも大きなご支援をお願い
したい。
 9月に実施を予定している全国一斉無料成年後見相談会は、早くも3回目を迎
える。平成15年からは障害者への福祉サービスも措置から契約へと移行すること
をも視野に入れると、相談件数の増加が予測されるので、50支部の相談体制をさ
らに充実させて臨みたい。
 ところで、リーガルサポートの活動により、成年後見業務は司法書士の新しい
分野であるとの社会的認知が確実に進んでいる。これは、多くの司法書士が地道
にかつ誠実に取り組んだ実績が評価された証左であると同時に、今後も成年後見
業務の専門家として生成してほしいという期待の表れであると思う。
 したがって、多くの司法書士がリーガルサポートに入会し成年後見実務に取り
組んでいただきたい。確かに、定型化された書式や手引書、マニュアルなどがな
いため、悩む場面が多い。また、立法段階ではあまり言及されなかった事項や施
行して初めて現出した論点が続出している(例えば、医的侵襲に関する同意の可
否、判断能力の判定のあり方等)。しかし、考えてみれば成年後見事務が非定型
的なものであるからこそ、司法書士の専門性を発揮することができるといえる。
事務はすべて個性的であり、定型化に容易に馴染みにくい分野ゆえに司法書士の
法律的な処理能力が期待されている(定型化されてしまうと専門性は薄らいでく
る)。苦労も多いかもしれないが、感謝される喜びもまた大きいと思う。まずは
取り組み、創意工夫して「成年後見実務」の新しい領域を創るべきである。そこ
に法律家たる司法書士の存在理由が、また今後の進むべき方向性が見いだせるの
ではないかと思う。
 司法書士が実践を積み重ね、オピニオンリーダーとして実務上の提言や研究発
表をすることによって、やがて司法書士の手によって定型化された書式や規格化
された執務基準が作れるはずである。将来、これを高齢者・障害者等の福祉の増
進と権利擁護に役立てる、そのことがリーガルサポートの大きな目標である。