月報司法書士 2002年6月号 [Legal Support News]より

成年後見3年目の課題

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
理事長 大貫 正男

 今国会における司法書士法改正を巡る参議院法務委員会質疑の中で、リーガルサポートが採り上げられた。国会審議の場での登場は初めてであり、委員の「司法書士の成年後見の取り組みとその評価は」という質問に対し、法務省房村精一民事局長が答弁したものである。リーガルサポートの設立、成年後見人等への選任件数、公益信託成年後見助成基金の設立、成年後見人養成講座の開設等の活動を詳細に説明した上で、「司法書士が国民に身近な法律家という自分たちの持っている能力を活用して、このような形で成年後見制度の充実に取り組んでいただいていることを非常に評価をしている」と述べられた。
 国会での答弁は、これまでの私たち司法書士の地道な取り組みに対し高い評価が与え得られたものであり、喜ぶと同時に身の引き締まる思いである。
 平成14年度の事業は、民事局長の答弁をはじめとする各界の評価を踏まえ、リーガルサポートの飛躍の年としたい。相談数が大幅に増加することに備えて、50支部の受託体制を整備し、また、社会は会員の成年後見人等への選任件数に注目し期待しているところから、「実績」をあげることも重要課題としたい。もちろん、選任件数の多寡だけでなく、善管注意義務や身上配慮義務にも意を尽くした事務処理に努めたい。「利用して良かった」「これで安心して生活できる」という利用者や関係者の声を大きくし、制度に対する信頼感の醸成には、「職業後見人」として名乗りをあげた専門職能の適切な運用如何にかかっている。
 ところで、成年後見制度はいくつかの大きな課題を抱えているのも事実である。その1つが成年後見人等の報酬である。
 新しい成年後見制度では、家庭裁判所は本人の財産の中から相当な報酬を成年後見人等に与えることができる旨の規定が設けられた。ところが、実際に成年後見人等が報酬を得るためには6ヵ月程度が経過した後、家庭裁判所に報酬付与審判の申立をしなければならない。この手続きは結構煩雑である。しかもその間、報酬額の明確な基準がないため具体的報酬額がわからないまま後見活動を続けなければならない。このような状況から、会員からは「報酬がはっきりしないまま活動するのは負担が大きい」と指摘する声が強い。また、継続的な処理が必要な後見事務については今後、毎月いくらというように、定期的な報酬付与を可能とするような基準をぜひ設けるべきであると思う。
 家庭裁判所や社会福祉協議会等からのリーガルサポートへの推薦依頼にあっては後見費用を十分に負担できない人々も少なからず存在する。また誰も後見人の引き受け手がなく、最後にリーガルサポートにたどり着いた人も少なくない。こうしたケースにおいても後見等の事務費用や成年後見人等の報酬は、基本的には本人の財産から支弁すべきものであるが、低所得者では後見活動に見合った報酬が十分に払えない。問題は、一体、誰が負担するかである。これは、リーガルサポート自体が補助人に選任されたケースだが、報酬付与審判の結果、月6,000円と決められた事例が報告されている。事務の煩雑さなどに比較してもあまりに低い報酬に驚き、リーガルサポートの責任において、担当した会員に一定の金額を補填する事にしたという事案である。リーガルサポートとしては、「公益信託 成年後見助成基金」等の利用を検討するなどして期待される公益活動に積極的に取り組む方針であるが、このまま推移すると、職業後見人の他に公的後見人(パブリック・ガーディアン)としての役割を負わざるを得ない。しかし、会費を主な財源とする組織が公的な支援がないまま、いつまで公的後見人の役割を果たせるのか、率直に言って疑問な点もある。低所得者層については、福祉予算や社会資源を有効に活用するなど政策的な配慮が必要であり、これを具体化するためにはリーガルサポートと厚生労働省、社会福祉協議会等との連携がさらに必要になると思われる。
 新しい成年後見制度においては、ボランティアでなく、「職業後見人」として成年後見人等に就任する道が拓けたが、我が国ではまだ馴染みが薄く、相当の報酬を得て安定的な後見活動を行うまでには至っていない。しかし、我が国の少子・高齢社会の進展、「財産管理はプロに」という考え方の普及等を視野に入れると、職業後見人に対する需要は増大すると思われる。前述の国会答弁によれば、すでに親族後見人の割合が90.9%から86.2%に低下し、逆に弁護士は4.6%から7.7%に、司法書士は3.2%から4.6%と上昇する傾向が見られるという。これを踏まえると、有能な職業後見人を養成・確保し、さらに制度の理念や事務処理の実効性を担保するためにも報酬の問題は避けて通れない重大なテーマだと言えよう。