月報司法書士 2003年01月号 [Legal Support News]より

法律の専門家と福祉の専門家による連携組織がスタート

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
理事長 大貫 正男

 成年後見制度が施行されてから3年を迎えようとしている。この間、関係者の努力により全体としては順調に推移していると言えようが、多くの課題が出現しているのも事実である。問題は、その課題が成年後見制度の利用に大きなブレーキをかけており、制度の見直しと改善の必要性は喫緊のものとなっている。また、課題はいずれも法改正や家庭裁判所の運用改善を必要とするような内容のため、解決には成年後見に関わるすべての機関や団体、学者、専門家、そして市民が結集することが求められている。
 このような状況から、制度の見直しを強力に推進できるような組織をつくることが期待されていたところその気運が急速に高まり、ついに今年1月18日、学者、弁護士、社会福祉士、そして司法書士が呼びかけ人となって「もっと身近な成年後見制度を目指して」と題するシンポジウムを開催する運びに至った。このシンポジウムの開催は、制度の主要な担い手が単一の実行委員会を組織し、一体となって催すという点において初めての試みであり、制度の発展にとって画期的なものと言える。
 振り返ってみれば、これまでこの種の催しはいずれかの専門職能が主催し、これに他の団体が加わるというものであった。しかし、これではシンポジウムとしては成功しても、制度を直接変える原動力には転化しなかったのである。リーガルサポートのこれまでのシンポジウムも例外ではなく、いくつかの提言はいまだその途上にある。
 リーガルサポートの取り組むべき課題は、身上配慮義務の内容と手配のあり方、低所得者への対応、法人後見の体制づくりと運用、親族後見人への支援体制づくり、医療行為の同意等多岐にわたっているが、いずれも単独の取り組みでは実現が不可能なものばかりである。とりわけ、低所得者への対応については、国や地方自治体の政策ないし予算配分にも関わるだけに、より大きな運動体が必要となる。公的後見人(パブリック・ガーディアン)の創設を提案するのであれば、社会に働きかけていくさらに大きなエネルギーがなくてはならない。
 最近では、いくつかの組織からリーガルサポートに対し、未成年後見についての後見人推薦依頼がある。司法書士が評価されている証左であり歓迎すべきことではあるが、定款の事業目的に未成年後見が掲げられておらず、受託は難しい面がある。そもそも、未成年者には固有の監護・養育等が求められ、場合によっては少年法等など別の対応能力が必要となるという問題もある。しかし、いずれにしても現状では他に相談すべき組織を探すのが困難なため、司法書士界を中心にして別の受け皿をつくる必要があろう。
 今回のシンポジウムでは、登壇者だけではなく会場の参加者からも建設的な発言を期待したい。それが、制度の改善や見直しの突破口となり、さらにその延長線上に「成年後見法学会」が設立されることを願っている。
 今回のシンポジウムのもう一つの意義は、職業後見人としての強固な連携ができるということである。成年後見制度によって、親族やボランティアではなく職業として成年後見人等に就任する道が拓けたが、そこには職業後見人としての共通認識なり、協力体制はできていない。立法者が意図した「法律の専門家」と「福祉の専門家」との複数後見による連携のあり方は実際の運用を見てから検討されなければならないが、それは今始まったばかりである。実務においては身上監護を手配する際も財産管理の職務が多く含まれており、その役割分担を明確にするのは容易なことではない。また、後見人としての適格性の判断は個別の申立てを通じて各家庭裁判所に委ねられているが、職業後見人の供給団体に、研修・責任体制、執務管理体制等があるか否かをチェックするための何らかの選任基準のようなものを検討する時期に来ている。これから多様な職種の参入が考えられ、選任基準ができれば、職業後見人の信頼性が高まり、それが利用の促進にもつながることになる。
 また、報酬のあり方については、職業後見人共通の関心事である。有能な後見人を確保し、質の高い後見事務を安定して行うためにも、適切な報酬のあり方を検討し、できれば家庭裁判所に対して統一的な報酬基準のようなものを求めていきたい。
 リーガルサポートは、平成15年度をさらに飛躍の年にしたいと考えている。制度の普及と利用の促進のためには、関連専門職能との連携だけでなく、施設、金融機関、信託銀行等との協力関係についても積極的に取り組みたい。リーガルサポートは公益法人という制約があるが、協力関係を結びたいという申し入れのある施設や企業については内容を吟味のうえ連携を深め、潜在的な需要を見出したい。
 注目すべきは、昨年10月16日、リーガルサポートは「高齢社会NGO連携協議会」(略称「高連協」/代表堀田力・久野木行美)に入会した。高連協は、53の公益法人等を会員とする組織であり、「すべての世代でつくろうふれあい社会」をスローガンに掲げ、「高齢者憲章」の作成と発表、国際会議の開催や参加など高齢社会への対応対策を推進する幅広い活動を行っている。今年度は、成年後見制度利用促進のためのビデオやテキストを作成し啓発事業を行っている点も興味深い。高連協への入会とシンポジウムにおける連携組織のスタート等を合わせると、リーガルサポートのネットワークは一段とすそ野が広がることとなろう。