月報司法書士 2003年02月号 [Legal Support News]より

知的障害者の支援とリーガルサポート

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
理事 名倉 勇一郎

■知的障害者の福祉サービスも措置から契約に
 成年後見制度が介護保険制度の導入とともに新しく生まれ変わったことは、皆さんもよくご存知のことと思います。介護保険制度は、今後増大・多様化が見込まれる高齢者に対する福祉サービスの自由化、契約化を目的とするものでしたが、平成15年度からは知的障害者・児に関する福祉の仕組みも大きく変わろうとしています。
 具体的には、障害者(身体障害者及び知的障害者・児)が施設に入ると、今までは「措置費」という名前のお金が払われてきましたがそれが「支援費」という名前に変わります(右図参照)。「措置費」というのは、国がすべきケアを施設が代行するということで支払われているお金です。それが「支援費」という名前に変わることで、主体は障害者自身になります。言い換えると、国には障害者のケアに対する責任はなくなり、障害者自身が自己の責任で自立を勝ち取っていかなければならない、国はその支援をするだけとも言えます。もちろん、介護をしている方の急な死亡や入院などにより緊急にサービスを必要とし支援費支給申請を行う暇がない場合、あるいは家族からの虐待等により本人からの申請が期待できない場合などには措置による対応が残ってはいますが、これはあくまでも例外的なケースとなります。
 障害者自身が主体となって福祉サービスを受けるためには、施設も含めた事業者との契約を締結する必要が生じますが、本人の判断能力が不十分であれば、契約を締結することが困難と考えられます。この場合の法的サポートシステムとしては、障害者が未成年の場合には親権に基づく同意もしくは代理行為、あるいは未成年後見制度があります。しかし、子供が成年に達している場合には、成年後見制度によりサポートする方法しかなくなります。未成年者と異なりたとえ親であっても、契約の当事者にはなり得ないからです。
 そのため、リーガルサポートでは、厚生労働省に対して知的障害者の支援費制度に基づく対応について協力支援の申し出をしており、各支部においても、昨年より知的障害者・児の家族団体や関連施設から講演の依頼がかなり増えてきています。
 そこで感じるのは、自己決定に時間がかかったり、自己決定がしづらい彼らの支援について、ご家族、特に親御さんたちが悩んでいる姿です。
 地域の学者、リーガルサポートの会員もお手伝いしての半年間にわたる勉強会の後、ある施設の親たちが出した結論としては、まず親が後見人になるという方法でした。また、数百人の入所者を抱える障害者のコロニーでは、リーガルサポートに対して後見の要請をされました。
 障害者自身が契約の当事者になるという、福祉の分野においては初めての経験に、施設や障害者の家族が戸惑っています。さらに、こうした施設とかかわりを持たない障害者については、成年後見の説明さえ受けられておりません。障害者の自立支援に向けた社会基盤が整う前に法律が先行しているというのが実情でしょう。
 今後、障害者を取り巻く環境によって、また、障害者を支援する人々の認識によって、様々な方法が選択されていくことでしょうが回答は出ておりません。
 こうした中で、リーガルサポートとしては後見人としてだけではなく、親族後見人や福祉関係者による第三者後見人のサポーターとして活躍しています。また、成年後見人養成講座をとおして具体的な後見業務をわかりやすく解説する後見制度の広報マンとしても活躍しています。

■契約制度に移行した場合の財産管理のあり方について
 従来の措置制度の下では、多くの場合、施設が年金を中心とする金銭管理をしてきているのが実態です。
 ある県の知的障害者施設での年金・預り金の管理状況の調査によれば、回答施設のうち更生施設、授産施設においては9割以上、通勤寮においても約半数の利用者が施設管理の方法をとっており、通勤寮においては、障害者自身の管理が3割弱あるものの、全体をとおしても、家族以外の第三者による管理はゼロという報告があがっています。
 本人の財産は自己管理が原則であるのは当然のことであるにもかかわらず、実態は施設管理が原則のようになっています。ただ、施設管理と言っても、実際に本人の権利が擁護できる管理がされているかというと疑義のある場合も多いのが実情です。以前、私が訪問した施設においても、本人の年金を借りに来る家族に対して、施設としては、ここで断ってしまうとその後、その家族が施設に来なくなり本人が寂しがるのではないかとも思い、なかなか断りきれないと言っていましたが、家族が来ないことによる施設としてのデメリットも加味しての対応ではないかと思えました。
 ひと足早く契約制度に移行した介護老人福祉施設においても同様の問題が指摘されており、東京都社会福祉協議会が発行している「成年後見制度及び福祉サービス利用援助事業の利用の手引」によれば、施設において管理できるのは、「入所者・法定代理人の自由な選択に基づく施設のサービス提供の一環として、日常的に購入する菓子や着替え、散髪代、医療費負担、介護保険サービス利用者負担金等に充てる目的の小口金銭」までとし、それ以外の高額の金銭までは含まないとしています。そして、高額の金銭や証券・不動産を施設で管理している場合には、入所者または成年後見人等の代理人が、金融機関や第三者専門家等に管理を依頼するのが現実的であるとしています。
 施設だから本人の権利を守れるのかということについて、第三者からの権利侵害については対応できたとしても、家族からの権利侵害については、上述のように、施設の対応は期待できない場合が多いのは悲しい現実と言えます。
 そのために成年後見制度が新しくなったのです。親族後見に対する家庭裁判所の監査、後見監督人による監査、そして、第三者後見等、第三者の視点の入った透明な後見事務が、結局は本人の権利を擁護していくことになるということを、本人に、家族に、施設に広く理解していただくことが必要なのです。