月報司法書士 2003年06月号 [Legal Support News]より

NHK厚生文化事業団 福祉ビデオシリーズ
「成年後見制度」が完成しました

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
理事長 大貫 正男

 日頃は、皆様からリーガルサポートの活動に種々のご支援とご協力をいただき心より御礼申し上げます。
 さて、リーガルサポートでは、リーガルサポート高橋弘常任理事がNHK厚生文化事業団より福祉ビデオシリーズ「成年後見制度」の制作委員を委嘱されたのを受け、同ビデオの制作に全面的な協力をしてきました。このビデオは、制度に携わる様々な専門家相互の連携の下に制作された点において、わが国最初のものと言えます。また、現場のリアルな様子を追いながら制度を理解することができるなど、通常のビデオにはないいくつもの特長を有しています。このビデオの完成により、リーガルサポートの目指す「関係者相互の幅広いネットワークの構築」がまた一つ実現されたものと考えます。NHK厚生文化事業団にはすでに多方面から貸し出しの希望が寄せられているとのことであり、今後の活用が期待されますが、完成にあたり、制作者である同事業団から直々のメッセージをいただきましたので、掲載させていただきます。


■社会福祉法人 NHK厚生文化事業団
  事業部 副部長 井沢 信司 氏からのメッセージ

 私ども、NHK厚生文化事業団では、社団法人成年後見センター・リーガルサポートに全面的なご協力をいただき、福祉ビデオシリーズ「成年後見制度」の制作を進めてきましたが、このビデオについて皆様に広く知っていただき、活用してもらいたいとの願いから末筆を取らせていただきました。
 このほど完成したビデオのタイトルは「成年後見制度」です。全4巻で、制度の支援の類型ごとに実際のケースを取材しながら制作したものです。以下、制作に至った経緯や、コンセプトについて書かせていただき、皆様の批評をお待ちする次第です。
 NHK厚生文化事業団は昭和35年に設立された社会福祉法人で、NHKの放送とタイアップする形で社会福祉に関連した様々な事業を行っています。福祉に関連したフォーラムなどのイベントの企画・実施、障害児と親を対象にした相談会や療育キャンプ、障害当事者や高齢者から文芸作品や体験論文を募ってのコンクールの運営、障害者・高齢者を支援する団体への助成など多岐に渡っています。
 こうした事業の中で平成2年に「福祉ビデオシリーズ」の制作が始まりました。事業団の事業の中に「福祉ビデオライブラリー」というものがあります。これはNHKが制作した福祉に関連した番組を著作権処理した上で一般に貸し出すもので、年々利用者が増え続け今では貸し出し本数が年間6000本に上っています。このライブラリーは貸し出しを行うとともに、必要とする関係先に配布して活用していただきたいとの願いから制作されてきたものです。テーマは障害者、高齢者を取り巻く様々な分野に及んでいますが、「重要なテーマながら、商業ベースで作った場合ペイせず、その分野でのビデオがあまり制作されていない」といったテーマでの制作に鋭意努めてきました。
 今回、「成年後見制度」をテーマにして制作することになったのも、こうした方針に沿ってのものでした。


■“分かりやすさ”を最優先に!

 私どもの「福祉ビデオシリーズ」は元来が福祉や医療の現場で働いている方や、大学や専門学校の福祉分野で学ぶ学生など、「広く一般市民」というよりは、「やや専門的な情報」を求める方のニーズにも応えられる内容を目指してきました。今回も、この方針に変わりはないのですが、複雑な法律制度に関わる分野なので「努めて平易であること」を最優先に考えました。司法書士の方々など法律の専門家だけでなく、成年後見制度を利用したいという一般市民の方が見ても理解してもらえるようにしたかったのです。ビデオを見たことで「何だかよく分からないが難しい制度のようだ」と思われてしまっては、制度の普及に逆行することにもなりかねません。
 このため、第1巻を入門編として全体像をまず理解した上で、第2巻以下で「任意後見」「保佐・補助」「成年後見制度」の各類型について手続きの詳細について解説していく方法をとりました。制度の基本を解説するイラストも「シンプル且つ分かりやすさ」を心がけました。すでにこの制度の研究をされ実際に後見業務に当たられている方にはあるいは物足りないかもしれません。しかし、司法書士の皆さんも日常多忙な毎日の中で、なかなか制度について勉強する時間がないといった方も多いと思います。そうした方にぜひ活用していただければ幸いです。


■百聞は一見に如かず

 こうしたビデオを制作する場合、現実のケースを基にして「再現ドラマ」で構成するという手法もよくとるのですが、なるべく、この方法は避けるようにしました。実際に起きている現実の動きを基に検証することが、「分かりやすさ」にもつながっていくと考えたからです。こうしたビデオでは取材対象となる方が知的障害を持つことも多く、相続などでトラブルに巻き込まれる恐れがあることから、「再現シーン」を多用することになりがちです。勿論こうした方々の人権を守ることが第一であることは言うまでもありませんし、「再現手法」を100%否定するつもりもありません。しかし、こうした方法はビデオの完成度からみればマイナスに働くことは否めません。また、知的障害があっても、その人に判断能力があれば、それをできるだけ尊重していこうというのが今回の成年後見制度の基本理念となっています。そのため現在、成年後見制度の下で支援を受けている方の撮影にあたっては、本人の意思を確認し、後見人等とも話し合い、実名で協力いただくことが可能と判断できる方については「今、正に起きていること」をそのまま追い、生の動きを見て制度を理解していただく様に心がけました。このことが「分かりやすさ」にもつながっていくことと思います。


■関係する職域の方々の連携

 成年後見制度が今後どのように普及するかという点に話が及ぶとき、必ず論ぜられるのが関係する職域団体の協力ということです。今回、福祉ビデオの制作にあたっては「制作委員」として4人の方に委嘱しました。この分野に詳しい各界の皆さんに、ビデオの内容について議論いただき、それに沿って制作を進めてきました。今回この制作委員に、筑波大学大学院教授の新井誠様、埼玉司法書士会から高橋弘様、東京弁護士会から吉澤雅子様、そして東洋大学社会福祉学部助教授の高山直樹様にお願いしました。皆さんご存知の通り新井様は永年、先駆的に成年後見制度の研究を続けてこられました。高橋様はリーガルサポート常任理事として制度の普及に力を入れています。また、吉澤様は、弁護士会の中で成年後見制度に取り組む人があまりいなかった時期から障害者の立場に立って支援を続けてこられた方です。そして高山様は福祉現場に精通し、福祉施設のオンブズマン活動を全国に先駆けて神奈川県の湘南地区に立ち上げました。こうした、それぞれの方の“専門領域”の情報を持ち寄って完成したのが今回のビデオです。成年後見制度普及の鍵とされる「職域を越えた協力」が一足先に実現したのが今回のビデオというのは少し言いすぎでしょうか…?


■テキストにもご注目!

 NHK厚生文化事業団の福祉ビデオには理解の手助けにテキストが添付されています。
 縦18センチ、幅が10センチの手帳サイズの小さなものです。ページ数も30ページあまりしかありません。しかし、“小ささ”に目を奪われず、ぜひ活用をお勧めしたいのがこのテキストです。ビデオを見ていて「ちょっと待てよ」となった時に目を通せば、きっと「ちょっと待てよ」の疑問に答えてくれるはずです。成年後見制度が2000年4月にスタートして以来、書店には制度について解説した多くの本が出ています。制度について学習する書籍には事欠かないのですが、「大著」には尻込みしてしまうという向きに活用してほしいのです。とりあえず制度の全体像を理解することを目的に、最低限の解説に絞りこみ、それ以外の説明は極力省きました。ビデオと併せての利用をお勧めしたいのですが、テキスト単独でお使いになっても理解の助けになると思います。特に、小生の様に最低限の労で最大限知っているように振る舞いたい方にはお勧めです。勿論、テキストを入り口に、次のステップとして「大著」で研鑚していただきたいことは言うまでもありません。

 最後にNHK厚生文化事業団制作の福祉ビデオについて再度ご案内申し上げ、活用をお願いする次第です。

 NHK厚生文化事業団
 福祉ビデオシリーズ
 「成年後見制度」

 第1巻   入門・成年後見制度
 第2巻   任意後見
 第3巻   補助・保佐
 第4巻   成年後見
           各巻 30分

 なお、このビデオは6月初旬から、NHK厚生文化事業団の「福祉ビデオライブラリー」で送料のみの負担で貸し出しを開始する予定です。

     ≪お問い合わせ先≫
      NHK厚生文化事業団  「福祉ビデオライブラリー」係
      TEL 03―3481―7855