月報司法書士 2003年08月号 [Legal Support News]より

「日本成年後見法学会」の設立について

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
副理事長 岩澤 勇


■1.「日本成年後見法学会」の設立について

 成年後見制度が創設されて3年を経た。この間、当リーガルサポートを中心に、司法書士が成年後見制度の創設及び発展に果たしてきた役割は極めて大きなものがある。また、この成果が、司法書士制度の発展に大きく寄与したことは言うまでもない。
 しかし、成年後見制度にはなお、「成年後見制度は役に立たない」とか、「成年後見制度は金にならない」といった悪しき評判が未だに横行している。また、「医師が診断書を書いてくれない」とか、「市町村長の申立てを期待したが、市町村役場が動いてくれない」というように、成年後見制度は必ずしも理想的な形で運用されているとは言えない。さらに、制度自体にも多分に改善の余地がある。
 これらの改善については、成年後見制度の現状や実体の理解を深めることも必要であるが、成年後見制度に関する理論的研究やノウハウの蓄積、その成果の集約といった事業が必要である。また、法務省や裁判所、関係省庁や地方公共団体、成年後見制度の現場に対して必要な提言をしていく必要がある。
 リーガルサポートでは、このような認識を持ち、早くから学会設立の必要性を考えていた。そして、本年1月18日に「〜もっと身近な成年後見制度を目指して〜」をサブタイトルとする成年後見制度シンポジウムを、弁護士、社会福祉士等とともに開催した。
 その後、2月から成年後見法学会の設立が具体化され、6月16日には、第1回発起人会が開催され、11月2日には設立総会を開催することが決定した。
 ついては、本年11月1日に日本成年後見法学会設立記念シンポジウムが、翌2日には日本成年後見法学会設立総会が、両日ともに東京都千代田区の「東商ホール」(予定)で行われる。概要は次のとおりである。
 (1) 日本成年後見法学会設立記念シンポジウム
  日 時 11月1日 12時30分より17時30分まで  *終了後に懇親会
テーマ  ドイツの成年者世話法と日本の成年後見制度の比較
登壇者 ドイツの学者、日本の学者、司法書士、弁護士

(2) 日本成年後見法学会設立総会
  日 時 11月2日 9時より13時まで
内 容 ・規約、役員等の承認
・記念講演


■2.「日本成年後見法学会」設立の意義
 「日本成年後見法学会」の設立準備は、司法書士、弁護士、社会福祉士が中心になって進められたが、対象会員にはその三者だけでなく、学者、学生、税理士、医師、公証人、福祉関係者、行政関係者、裁判所関係者その他、「成年後見に関する実践活動を行い、又は法的問題について研究する個人」(規約案5条)を広く予定している。又、会員以外に利用者側の人をも含めるための会友制度も用意され、学会の「活動に参加することを希望し、もしくは情報を求める個人」(同8条)が参加することができることとなっている。そして、それらの参加を前提に、以下の活動目的が掲げられている(同4条)。 (1) 成年後見に関する法的問題の調査、研究並びに啓発
(2) 学会誌その他書籍の発行
(3) シンポジウム、講演会等の開催
(4) 成年後見に関する諸問題に関する意見の公表及び国、地方公共団体等への提言
(5) 内外の関連団体及び学会等との協力体制の構築、連携
(6) 成年後見に関する研究者及び実践者の育成及び支援
(7) 会員間の協力体制の構築
 学会でこれらの諸活動が展開されることになれば、成年後見制度の普及、発展の大きな力になることは言うまでもない。また、全国組織として奮闘してきたリーガルサポートの役割にも変革をもたらすことになる。一方で、この「日本成年後見法学会」が十分な働きをなし、リーガルサポートが先進的な活動を怠るときは、リーガルサポートの地盤沈下をもたらしかねない。
 司法書士は、成年後見制度の発展に大きな力を尽くしてきた。そして、そのことが司法書士制度の発展に寄与してきたことは前述のとおりである。しかし、潜在的な需要を考えると、会員数3,000人程度の陣容はいかにも脆弱である。また、その質の程度も必ずしも十分とは言えない。司法書士界としては、これまで以上に個人、組織の双方をあげて成年後見制度の充実発展に取り組み、それがもたらす司法書士制度への効果を期待すべきであろう。成年後見を実践する中で、現に未成年後見問題や相続、家庭問題といった家裁事務が期待されている。
 司法書士が日本成年後見法学会に参加し、その中心的勢力として活躍することは、司法書士にとって従来の取り組みと並行してなされるべき重要な課題である。

日本成年後見法学会 問い合わせ先事務局
民事法研究会(担当:鈴木・田中)TEL 03−5351−1571(代)