月報司法書士 2003年11月号 [Legal Support News]より

列島南下、沖永良部島から
うがみやぶらー(こんにちは!)

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
鹿児島支部 支部長 安田 雅朗

 成年後見制度がスタートして、3年が過ぎました。しかし、旧制度に比して申立件数が爆発的な広がりを見せている反面、地域的な(特に都市部と離島等の郡部における)格差の広がりも否めないのも事実です。鹿児島県の特性としては、高齢化比率が高く、独居高齢者の世帯数が全国で最も多いことです。自己の財産管理や今後の生活全般についての不安、問題点等相談事案は潜在的に多いはずだと考えていました。しかし、この3年間での離島からの後見制度の申立件数は、県内全体の1割にも満たない状態です。
 このような状況をふまえ、今回初めての試みとして、奄美群島最南端に近い沖永良部島の和泊町で講演会と相談会の開催を、制度の広報・周知を図り、併せて受け皿としての体制整備につなげたいという思いから、支部事業として実施することを企画しました。申立てが少ないことや在住する5名の司法書士が抱える問題点等、離島の現状を自分の目で確認して、地元の人たちと焼酎でも酌み交わしながら、ざっくばらんな意見交換の場も持ちたいと考えてのことでもありました。
 このような次第で、鹿児島から約2時間のプロペラ便でとても残暑とは言えない照りつける太陽の島、沖永良部島和泊町に本年9月5日到着しました。沖永良部島はフリージアの産地として、また珊瑚が隆起してできたために、観光資源としての鍾乳洞が有名な周囲50キロの琉球文化の色合いの濃い小さな島です。島内には和泊町、知名町の2つの町制が敷かれ、合わせて約15,000人の人々が住んでおり、全体の約3割に当たる4,200人ほどの高齢者が2町に分かれて生活をしています。
 島内には法務局の出張所はありますが、裁判所の支部、出張所はありません。このため、司法書士が住民に果たすリーガルサービスの頻度や密着度、信頼度も高いと思われます。その反面、家庭内での問題があっても、客観的に法律的な解決方法を取ることを嫌がり、内部で処理してしまう閉鎖的な面があることも聞いていました。このような状況下で翌6日の日曜日は、朝から蒸し暑く、果たして何人の住民が講演を聴きに来てくれるのか、また何組の相談者があるのか、それこそジリジリ身を焼かれる思いで、会場の設営に汗を流すことから始まりました。開始時刻10分前までは数人の来場しかなく、「ああ、やっぱり」と思い始めていた矢先、続々と来場者が集まり始めました。当日は他のイベントがあったにもかかわらず、社会福祉協議会の協力や有線放送、地元新聞紙上での広報が功を奏し、来場者は何とか目標の50名を超えることができました。リーフレット等資料を配布し、成年後見制度の利点や必要性について、また現在関わっている事案等を具体的に説明しました。午後からは、地元から3名の司法書士も加わり、相談会を開催しました。
 相談を受けて驚いたことは、これまで住民達は地元の司法書士ではなく、奄美大島群島の中心である名瀬市まで、わざわざ相談に出向くことが度々あったという事実です。ある程度予想はしていたものの、地域の密着性がこれほど強く、身内の問題を地元の司法書士へ相談することへの抵抗感の強さに、今更ながら驚いた次第です。地域の閉鎖性のため、相談事案があるにもかかわらず、潜伏してしまっていたというのが実情のようです。実際、今回私たちが鹿児島から来るということで、書類を抱えた相談者が大勢集まってきました。そして、各々の事案に要した相談時間の長さは(長いものは2時間近く)、これまで地域の人にとって必要な相談の「場」が提供されていなかったことを、如実に表していました。また、司法書士の側にも、双方代理の登記事務を中心となし、当事者双方をよく知っている関係上、民事、家事を含め紛争性のある事案への関与に際しては、利益相反に抵触するおそれがあります。そのため、相談自体も受けることができないということが、問題点として浮き彫りになってきました。当初、予想していた以上に深刻な問題が、相談者と司法書士の双方に内在していることに気付かされたのです。閉鎖的な離島であるがゆえの課題を直ちにクリアすることは、難しいと思います。しかし、少なくとも制度が存在することの広報、周知は図らねばなりません。そして、利用者のためにその一助となることは、リーガルサポートの社員であると否とに関わらず、制度が民法の改正によるものである以上、司法書士としての責務であると思います。
 今回の相談会で2件の申立事案が予想されるため、地元の司法書士にその後を託して受諾してもらったことは、一つの成果だったと考えています。今後も司法過疎の離島(特に家裁の出張所のない地域)において、少しでも多くの機会を提供すべく相談会の開催を継続事業としていく必要があると思います。また、家裁や関連団体にも呼びかけて、家裁出張所のない離島での、共催による定期的な相談会の開催の実現に向け、努力していきたいと考えています。