月報司法書士 2004年06月号 [Legal Support News]より

設立5年目の現状と課題

社団法人 成年後見センター・リーガルサポート  理事長 大貫 正男

 本年12月22日、リーガルサポートは設立5周年という節目を迎える。短い期間にも関わらず、多くの会員や法人自体が成年後見人等に選任され、各地において幅広い後見活動を行うことができた。同時に、全国一斉無料成年後見相談会や成年後見人養成講座等の開催、「公益信託 成年後見助成基金」の設立、『実践 成年後見』の責任編集等の普及活動を先駆的に行い、さながら成年後見制度に関するナショナルセンター的な役割を果たすことができた。さらに、公益法人としての創意と活力を生かし、財産管理と身上監護という「新たなる公益」を創造したことも関係者から高く評価されている。これも、会員各位の努力と関係機関のご支援のお陰である。
 さて、「静かだ」と言われてきた成年後見制度であったが、ここで急激な普及の兆しが見えてきた。それは一つに、2003年9月における要介護認定者314万人のうち149万人の方が痴呆症状、そして現在の施設入居者70万人のうち8割が痴呆性高齢者という現実を前にして、介護保険を利用する人が低所得者であっても成年後見制度の活用が可能となるシステム(保険から報酬が支払える)の必要性が各方面で叫ばれているからである。これに関連して、厚生労働省の中村秀一老健局長が成年後見制度を「介護保険のサブシステム、社会保障・社会福祉のサブシステム」と大変わかりやすい位置づけをされている(「日本成年後見法学会『成年後見法研究 第1号』に収録」)。まさに成年後見制度は家庭や施設など社会の様々な分野で、なくてはならない普遍的なシステムなのだ。また、第159回通常国会に提案された「総合法律支援法案」において成年後見制度がその対象業務として位置づけられたことも普及にとって明るい材料だ。リーガルサポートとしても、今年度は新たに「老後の安心・死後の安心」をキーワードに遺言と任意後見制度に関する説明会を関東を中心に行い、制度の定着をはかる計画である。
 こうした現状を踏まえると、制度の利用者は急激に増加し、そこに「有能な後見人の獲得」という最も基本的な課題が顕在化することが予測される。リーガルサポートとしても制度に対する需要が拡大する前に入会を促進させ、職業後見人を過不足なく供給する体制をとりたい。しかし、残念ながら一部地域では家裁等からのせっかくの推薦依頼に応えられない状況となっている。これは何としても打開しなければならならず、今年度は全司法書士数の2割に相当する3,500人を目標に400人の増員を図りたい。成年後見制度の担い手は間違いなく司法書士が中心になることが期待されているので、ぜひ積極的な参画をお願いしたい。
 同時に、職業後見人としての能力の質を高めることも大きな課題である。家裁等からは、法律専門家であることに加え、独自の研修と執務管理体制があるからこそ成年後見人等の供給団体として認められたのであるから、会員はその責任の重さを常に忘れてはなるまい。まして、最近は会員の具体的執務において権限濫用や利益相反等の問題が取り上げられる傾向にある。家族や利害関係人の言に左右されたり、後見人としての職務権限範囲に鈍感になったりしてはいないだろうか。自戒しなければならない。今年度は、職業後見人としての執務向上、職務過誤の防止、そしてその意識改革のために執務・倫理研修を徹底して展開する予定である。家裁に対しては、成年後見人等の推薦依頼を円滑に行うための意見交換会だけでなく、職務遂行等に関する相談が容易にできるような体制づくりを働きかけたい(矢頭範之「後見人執務倫理の一考察」日司連『会報THINK』102号を参照)。
 ところで、有能な職業後見人を獲得したとしても、質の高い後見業務を安定して行うためには業務に見合った相当な報酬が支払われる必要がある。しかし、現状において妥当な報酬額が決定されている事件がある一方で、「補助」の報酬が低い、身上監護のための業務が考慮されていない、業務の実態をよく見ていない等の不満を耳にする。つまり、報酬決定の仕組みが不透明であり、このことが後見執務の取り組みについての一つのネックになっていると思われる。成年後見人等の業務を魅力ある分野とするために、業務に見合った報酬のあり方を提案するとともに、家裁に対しても適正な報酬体系の導入を求めたい。さらに、親族後見人に対比して使用されている第三者後見人または職業後見人という名称について、将来のあり方を含め統一名称を提案することも視野に入れたい。
 その他にも、法人後見体制の整備・充実、法制度上の問題として医療行為の同意等々課題を挙げると枚挙にいとまがない。とりわけ今年度は、介護保険制度の見直しにおいて介護保険から報酬が支払われる仕組みが具体化することを前提にして、地域でその受け皿作りのための協力関係を構築することも当面の大きな課題である。
 今、地域社会では近隣と助け合ったり支え合う関係が解体されつつある。治安も急激に悪化している。しかし、成年後見制度を推進する連携体制が構築できれば、助け合いのネットワークや人と人との絆が生まれ、温もりのある共同体の再生につながるという作用も期待できる。その意味でも成年後見制度は実に大きな可能性とエネルギーを持つシステムと言える。リーガルサポートは、この制度を定着させるため、関係者の支援を仰ぎながら今後の課題に果敢に挑戦していきたいと考えている。